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はじめに
会社員や公務員の方が退職する時に貰える退職金。
ですが、転職すると将来受け取る退職金の総額が減る可能性があることは知っていますか?
また、ここ10年で退職金の平均額がいくら減っているか知っていますか?
本記事では、退職金の考え方と今後の日本の退職金制度の変化について紹介します。
この記事を読んで欲しい人
本記事は、以下にあてはまる方に読んでいただきたいです。
- 転職したいけど退職金がいくら貰えるのか知りたい
- 転職すると将来もらえる退職金は具体的にいくら変わるの?
- そもそもこれからの日本の退職金制度ってどうなるの?
できるだけ具体的な情報をお伝えします!
それでは、見ていきましょう。
結論
最初に結論をお話しします。
- 退職金はここ20年で右肩下がりが続いている。
- 転職すると退職金は減る傾向にあるが、退職金制度自体が不安定なため退職金が減少することを転職のマイナス要因に捉える必要はない。
- そもそも退職金は無いものとして考え、自分に合ったライフプランを考えるのがおすすめ!
実際に詳しく見てみましょう。
退職金制度について
ここで改めて、退職金制度について整理しましょう。
1. 退職金制度
退職金制度とは、退職者が一定の条件を満たす場合に企業や行政が退職金を支給する仕組みです。
ちなみに退職金は正式には退職給付制度と呼びます。
この制度を利用する際には、給付条件に注意が必要です。
会社によって退職金制度は大きく異なるので、ご自身の会社の制度をよく確認しましょう。
わかったよ!
一般的な条件としては、特定の年齢に達することや、一定の勤務年数を達成した場合が挙げられます。
そのため、転職を検討する際には、現職の契約内容を確認し、条件を理解しておくことが重要です。
また、会社側から退職者を募集する早期退職制度を利用すると、一部のケースでは退職金を受け取る代わりに、一定期間にわたり給与を支給されることもあります。
早期退職制度では本来の退職金の額より高いお金が貰えることがあります。
2021年に本田技研工業が早期退職を募った時は、通常の退職金に1年分の年収が上乗せされたみたいだよ。
これらの契約条件を明確に理解し、将来のキャリアプランに合わせて判断しましょう。
2. 退職一時金と企業年金
退職金は主に「退職一時金」と「企業年金」の二つに分けられます。
退職一時金は、企業が労働者に対して退職時に一度だけ支給する一時金です。
この支給金額は主に勤続年数や最終給与に基づいて計算され、一度にまとめて支給されます。
退職一時金は、従業員の経済的な安定をサポートするための一時的な補償として提供され、その後の責任は個人に委ねられます。
「退職金」と聞くと真っ先にイメージするのがこちらのパターンですね。
一方で企業年金は、一定の期間を勤務した従業員に、退職時に給付される年金制度です。
企業年金は通常、企業が基金を積み立て、従業員の勤務年数や給与に応じて将来の年金給付額が計算されます。
これは、退職後の長期間にわたって一定の収入を提供し、従業員の老後の生活を支える役割を果たします。
企業年金は、従業員と企業が共同で貢献し、将来の給付が保証されている点で、安定性が高いと言えます。
企業年金では、皆さん個人の同意の上で、一部もしくは全部の基金を運用に回すこともあります。
3. 労働法に基づく支給条件
労働法に基づく退職金の支給条件は、一般的には以下の要素が含まれます。
- 勤務年数
- 最終給与
- 退職時の年齢
これらの要素は、企業ごとに異なる条件が設定されるため、転職前に雇用契約書や労働法を詳細に確認しましょう。
勤務年数に関して、厚生労働省のデータによると大卒総合職においては、勤続10年で9.4ヶ月分、勤続20年で20.1ヶ月分、勤続30年で35.6ヶ月分、定年まで働くと46.7ヶ月分の退職金が貰えます(あくまで平均値ということに注意)。
平成29年賃金事情等総合調査(中央労働委員会)
大卒の方が新卒入社〜定年まで勤め上げるとざっくり2000万円の退職金になる計算です。
将来の退職金事情
ですが、今後の日本は以下の理由によって退職金制度が大きく変化すると言われています。
1. 高齢化社会の影響
日本は高齢化社会の影響を強く受けており、これが将来の退職金事情に影響を与えています。
高齢化社会に伴い、次のような変化が考えられます。
- 退職金の支給年齢が引き上げられる可能性があります。これにより、退職金を受け取るまでの期間が長くなり、個人・家庭でのきちんとした財政管理が求められます。
- 高齢者の就業が増加することで、労働市場全体の競争が激化する可能性があります。これにより企業側が労働条件や退職金制度を見直すことが考えられます。
将来にわたって年金支給額が減ることは確実と言われています。
じゃあ老後資金を得るためにもっと長いこと働かなくちゃ!って考える人が出てくるわけだね。
2. 労働法改正の可能性
政府は労働法の改正に取り組んでおり、将来の退職金事情に大きな影響を与える可能性があります。
改正の焦点となるポイントは以下の通りです。
- 退職金の支給条件や金額の見直し
- 労働者の権利と企業の負担のバランス調整
- リタイアメントプランや老後の生活支援制度の導入
これらの改正が実施される場合、転職者や将来の労働者にとって新たな選択肢や財政計画が必要になるでしょう。
そもそも退職金制度は、高度経済成長期の物価上昇率に賃金アップが追いつけない企業が増えたことによって拡大した制度と言われています。
そこから50年も経った今では、昔の理屈が通用しなくなるのは当然だね。
3. 終身雇用の崩壊
終身雇用の崩壊は日本の労働市場における大きな変革をもたらしました。
その中でトヨタ自動車は特筆すべき事例です。
長らく終身雇用制度を支持してきたトヨタも、状況に応じて柔軟性を持たせる方針へと転換しました。
2019年には豊田章男元社長が「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べ、社会に大きな衝撃を与えました。
長らく終身雇用制度を支持してきたトヨタですが、競争激化や国際的な経済の変動により安定雇用を行うことは難しいと考えたのです。
特に、年齢が高く高級取りだが生産性は低い社員は要らないという強いメッセージが込められています。
入社したらあとはおんぶに抱っこでOK!の時代は終わりというシビアな現実・・・。
終身雇用が前提だった退職金制度は大きな変化点を迎えているわけだね。
転職したら退職金はどれだけ変わる?
ここからは実際に皆さんが転職した場合、どのくらい退職金が変化するのかを考えてみましょう。
具体的なケースをいくつか挙げてみるので、ご自身に近いケースでイメージしてみてください。
比較しやすくするため、学歴は大卒、入社時の年齢は25歳、定年は65歳と統一します。
退職金額は厚生労働省の調査データに基づいており、あくまで平均額であることはご承知おきください。
ケース1:終身雇用タイプ
定年まで同じ会社で働き続けたAさん。
定年時に受け取る退職金は約2,100万円です。
ケース2:1回転職タイプ
10年目で最初の会社から次の会社に転職し、その後定年まで働いたBさん。
退職金の合計は約1,700万円になります。
- 1社目:10年勤務し自己都合退職だと5.5ヶ月分支給。35歳の月額給与中央値365,000円から算出すると約200万円になります。
- 2社目:25年勤務し会社都合退職(定年)だと27.8ヶ月分支給。60歳の月額給与中央値541,000円から算出すると約1,500万円になります。
終身雇用タイプと比べて400万円ほど下がっています。
ケース3:3回転職タイプ
10年おきに転職をしたCさん。
退職金の合計は約900万円になります。
- 1社目:10年勤務し自己都合退職だと5.5ヶ月分支給。35歳の月額給与中央値365,000円から算出すると約200万円になります。
- 2社目:10年勤務し自己都合退職だと5.5ヶ月分支給。45歳の月額給与中央値376,000円から算出すると約207万円になります。
- 3社目:10年勤務し自己都合退職だと5.5ヶ月分支給。35歳の月額給与中央値550,000円から算出すると約248万円になります。
- 4社目:5年勤務し会社都合退職(定年)だと4.5ヶ月分支給。60歳の月額給与中央値541,000円から算出すると約244万円になります。
終身雇用タイプと比べて1,200万円ほど下がっています。
モデルケース別退職金のまとめ
それぞれのケースをまとめて表にします。
Aさん(終身雇用タイプ) | Bさん(1回転職タイプ) | Cさん(3回転職タイプ) | |
退職金合計 | 2,100万円 | 1,700万円 | 900万円 |
Aさんとの差(金額) | - | -400万円 | -1,200万円 |
Aさんとの差(割合) | - | -19% | -57% |
ただし、計算には平均値や中央値を使っているので金額自体に大きな意味はありません。
金額はあくまでも参考として、このくらいになるんだな、と思うくらいにしましょう。
でもこれって将来も退職金制度が変わらない前提の話なんだよね。
退職金制度は衰退する一方なので、この金額を鵜呑みにしてはいけません。
厚生労働省の就労条件調査によると、大卒者の退職金平均額は、2007年が2,323万円なのに対して10年後の2017年では1,788万円に。
実に535万円のマイナスとなっています。
私としては、退職金は無いものとしてライフプランを考えるようにしています。
また転職時に前の会社から退職金が貰えるのであれば、それをNISAで運用するなどして資産額アップを狙うチャンスが得られたとも考えられます。
若い時にまとまったお金を貰えるのは大きなメリットだね!
まとめ:退職金は「もらえたらラッキー」くらいに考えよう
退職時にはいくら貰える?転職したら退職金はどうなる?と気になる方は多いでしょう。
ですが、現在の退職金制度は非常に不安定で、この制度をあてにするのは良くありません。
むしろ転職の機会を、退職金が減るからという理由で諦めるのは本当にもったいないと思います。
現状の退職金制度の流れと実情を理解した上で、きちんと納得して転職するかどうか結論を出してくださいね。